〜広大なスケールの中を走り続けるというのが一番違う、かな

走る人:フレーダー(グスタフ・フレーリッヒ)
と き:2026年
ところ:未来都市メトロポリス (地図はベルリン・テンペルホーフにあった映画会社ウーファー社)
より大きな地図で 走る映画 を表示未来SFジャンルの元祖にして圧倒的名画です。
作られた年から100年後の2026年が舞台ですから、おお、もうあと14年後ですね。
86年前に想像された100年後の世界をもうすぐ確認できるわけです。
物語そのものはとてもシンプルです。
巨大都市メトロポリスを頭脳で支配する一人の男と機械文明の恩恵を受けた富裕層の人々。
それを支える大勢の地下労働者たち。
極端に不平等な階級社会を正しく導くために、労働者たちに団結を説く女性。
『頭脳』と『手』を結びつけるのは仲介者が必要、それは『心』というのがテーマです。
描かれた世界は、意外と慣れ親しんだものでした。
この映画があまりに影響力が強すぎて、他の映画、マンガ、ドラマなどいろんなものに真似されたため、どこかで見たような気持ちになってしまうんですね。
たとえば、ビルの林立する未来都市の様子。
変に車が飛んでいたりせず、なかなかリアリティがありますが、子供のころからマンガで慣れ親しんだ世界なんですよね。

あるいはテレビ電話。

これ、
「2001年宇宙の旅」などと比べても全然古くないですね。
もちろん今実際に使っているものとも違和感ありません。
オフィスの様子も興味深いです。

この上から文字がふってくるディスプレイ(縦長でいくつもあります)など、株価情報の流れるティッカーボードを彷彿とさせて感心します。
ただ、帳簿のようなものをめくって仕事している様子はやはりちょっと古いですね。
このようにすごくよくできてるところがある半面、なんだこりゃと思うところも当然あります。
人造人間をつくる科学者ロートヴァング(ルドルフ・クライン=ロッゲ)の実験室の様子。
かなり複雑な装置が並んでいるけれど、メインはぶくぶくいってるたくさんのフラスコです。

人造人間を人間化するシーンは今見ても古びていないので、ここはやや残念です。
そもそも地下で大勢の労働者が肉体労働をしているという設定自体が、かなり違います。
行列で黙々と行進して、大きなエレベーターで地下へ送り込まれます。
いや、しかし東京の地下鉄に乗り込むサラリーマンの大群と考えれば、それほど違わないか。

今現在、構造は同じかもしれませんが、肉体労働ではなく、より社会的でより精神的なギャップが問題になっているのではないでしょうか。
街の支配者フレーダーセン(アルフレッド・アベル)の息子で、主人公であるフレーダー(グスタフ・フレーリッヒ)があるきっかけでその地下で働くことになるのですが、あまりの過酷さに叫びます。
「お父さん 10時間労働は長すぎる! 終わらないよ」

さて、そしていよいよ走るシーンです。
冒頭で、富裕層の子弟たちが生活する施設「子弟のクラブ」という描写があります。
そこには講義室や図書館、劇場などがあるのですが、スタジアムもあります。
そのスタジアムで、上半身はだかで走る男たち。

超ロングとアップ。

主人公フレーダーがここで走りに走っています。
これがかなり不思議な印象です。
とんでもなく広いスタジアム。
嬉々として競走をする若者たち。
異常なくらいの明るさ、嬉しさなのですが、なぜかとても不安な気持になります。
このあとも、フレーダーは全編に渡ってかなり走っています。
よく考えたら、私たちは日常はそんなに走りませんよね。
学校でも廊下は走らないように教育されますし、会社でもどたばた走っていると怒られます。
ものすごく広いところに置かれると、走りたくなるのかな?
そんな風に思うほど、どの場面も広さや奥行きスケールが大きいんですよね。
他にもなんかグエル公園みたいなところで、スケスケ(表現が古くてすいません)の服をきた女たちと戯れるフレーダー。
なんなんだろうか、と思います。

はたと気づくと(そんな大したことではないですが)これは未来SFと書きましたが、本質は悪夢と希望の物語なんですね。
バベルの塔や七つの大罪なども出てきて、宗教的な面も色濃く出ています。
そういう風に見ると、何が近くて何かはずれているというようなことは全く気にならなくなります。
この圧倒的なスケール、強引な展開は悪夢を見ているようです。
エネルギーの停止、湧き上がる水に逃げまどう子供たち。
ああ、これが単なる悪夢で終わってくれればいいのだが、などどいらぬ心配をしてしまいます。
反乱する労働者たちの走る様子。いったい何人いるのでしょう。

そうそう、忘れてはならないのは、この街の歓楽街が「ヨシワラ」というんです。

左側にちゃんとYOSHIWARAという大きな看板文字がみえますよね。
ここがかなり邪悪なものの象徴として登場してます。ちょっと複雑な思いです。
最後になりますが、やっぱり人造人間ヘル(あとではマリア)でしょう!
この不思議な美しさ。

彼女?が歩く様子がまたなんとも言えず素晴らしい。
私としてはこのヘルに走ってほしかった!
いや、この姿では走らないほうがいいかもしれない。
このぎこちなく歩いてくる姿こそ、最高の見どころかもしれません。
さて、あと14年。
日本はこのようなロボット(アンドロイド)をつくることができるのでしょうか?
※「メトロポリス」は様々なバージョンが存在します。今回は2001年デジタル復元バージョン(118分)で書いていますことをご了承ください。
2012.01.20.